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「染の小道」とは…

西武新宿線の落合とか中井という妙正寺川の流域は、江戸〜東京の着物の産地でした。現在ではすっかり斜陽産業と化してしまった和服業界ですが、僅かに残った染色工房や関連業者と街の住民が協力して、年に一度のお祭りを開催いたします。
妙正寺川には、かつて川で反物を洗っていた風景をイメージして、宙空に反物が掲げられ、周辺の商店約百店舗の軒先には、オリジナルののれんが飾られます。

抽選会

2月下旬開催の「染の小道」に先立つこと4ヶ月前、中井の某所で、商店とのれん作家のマッチング抽選会が催されます。作家がお店を引く年と、お店が作家を引く年が交互にあり、緊張の一瞬です。「江戸小紋」「東京友禅」「紅型」 など、蒼々たるお名前が並びます。その中に自分の名前も加えていただくことは、かなり嬉しいことです。

打合せ

抽選会で当たった店舗と、打合せを重ねます。
私が当たったのは、地下鉄の出口のすぐそばの「伊野尾書店」という本屋さん。本来のれんは入口正面に掛けるものですが、自動扉が設置された店舗では、風が吹きのれんが翻るたびに自動扉が反応してしまうので、右か左に除けて展示することになります。中央を除けて展示するのなら、どうせなら左右一対の組作品にさせてくれないか? と、こちらから提案。店長の快諾を頂きました。

アイデア

左右の対作品にすることは、こちらの提案を了承して頂きましたが、さて、今回は「白抜き」という型染の技法を使おうという事だけは、自分で決めてました。本屋の店先ですから、もう色彩に溢れているはずですので、逆になるべくシンプルに行こうと思ったからです。そういう時は、地色に図形を白く抜いた「白抜き型」が最適です。はて、家紋でもいいけど、何を白く抜こうか…?  ぢっと手を見る…。

型彫り

「手」をモチーフにしよう…という事は、決まりました。
連日、手のスケッチを重ねながら、手の印象的な名画を集めました。ベン・シャーンは、顔と同じかそれ以上に手にこだわった作家です。浮世絵の歌麿。女性の手の表情がシビレます。他にも染色作家の兼先恵子さんの作品などを参考にしつつ、イタリア・ルネサンスのかの有名な天井画の一部を模写させていただきました。

糊置き

手は、のれんのフチからはみ出るくらいに、大きく。…しかし、これだけ大きな型の糊置きなど、普通はそれ程経験がありませんので、糊の厚みを一定に整える手直しに、手間と時間を取られました。ここまでで、年内の作業は終わり。手直しの画像は、年賀状で使われました。

地染め

さあ、いよいよ地染め直前。当初の予定では伝統的な濃紺にしようと思っていましたが、季節が冬なので寒かろう…ということで、赤茶系に変更。ミニサイズのものをいくつも作り、様々な色に染めて、人気投票。決定は、新年会の席上。

水元〜乾燥〜縫製

さすがにこれだけのサイズのものを作るのは年に数回ですから、作業は難航を極めました。

完成〜設置

まぁ、地下鉄の出口を出るとすぐに見える位置だけに、印象的な作品になったと自負しております。設置は書店の店員さんにお任せし、思った通りの思った以上の作品になりました。ありがとうございました。
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